では、いよいよプロトタイプをテストしていきます。もちろん、自分でテストして終わり、ではありません。それでは、主観的な情報になってしまうので、テストをする意味が無いのです。
実際に作ったプロトタイプをテストするときは「最も想定されるユーザー属性に近い人」を数名集める必要があります。前項で僕が作ったプロトタイプを試すなら、よく海外に行く経験を持つ人です。旅行好きでアクティブで、現地の人とふれあいたい、そして語学を学んでいる人が良いでしょう。
ここで、まったく異なる属性の人を集めてテストしてもらっても、良い結果はでません。例えば旅行にも行かない、特に語学にも興味が無い人を集めてテストを行ったところで、無意味な意見が返ってくるだけです。
属性を間違えたがために、売れる可能性のあるものに低評価がついたり、売れないものが高く評価されたりしてしまいます。テストで生の反応を取りそこね、勘違いし、大きく失敗してしまうケースもあります。あくまでも、サービスやプロダクトを使うユーザー属性に近い人にテストしてもらわなければなりません。
実際に数人に協力してもらってテストをすると、たくさんのフィードバックを得ることができます。ただ使いたいか、それとも使いたくないかという話だけではありません。テストすることで、数多くの意見や改善点をもらうことができます。僕のサービスの場合は以下のような意見がでました。
- どうやって安全性を確保するか
- 待ち合わせ場所の指定や集合はスムーズに行えるか
- 単なる出会い系アプリにならないか
- 顔が把握できたらアプリでマッチしなくても身バレしてしまう
このような問題がいくつか見つかったものの、これを解決できれば、なんとか気に入ってもらえそうでした。その場の人の意見をもらいながら改良し、形を高速で変化させながら、何度か試していきます。
テストのポイントは、その場に集まった人と一緒にプロダクトやサービスを考えていくことです。むしろ、集まってもらったユーザーに作ってもらう姿勢でもいいくらいです。起業家の主観的な視点や思い込みではなく、生のユーザーが持つ声を元に作っていくことが重要です。
ただ、まるっきり丸投げでいいかと言えば、そうではありません。起業家の仕事とはそもそも、一般の人が見落としてしまいがちなヒントから、普通の視点では到達できないようなアイディアや問題解決法を見つけ、実現していくことにあります。
ユーザーの様子を隅から隅までしっかり観察してください。何も見落とすことの無いように、映像、音声、メモ、写真など、可能な限りあらゆる情報を記録してください。あらゆる記録媒体で残しておけば、あとからでもプロダクトやサービスへの反応を見返すことができます。
こうやってテストを何度かのグループにわけて行いながら、少しずつ質をあげていくと、次第に求められるプロダクトやサービスが何なのか見えてきます。繰り返しプロトタイプを改良しながらテストしましょう。
なお、こうした大きめなテストができない場合は、ユーザー属性が近い人にカフェやファミレスで説明して意見をもらうといった、簡易的なものでも情報は集まります。その場で試せるプロトタイプを持参してください。もちろんプロトタイプも、カフェでのトークで最大限の可能性が検証出来る形にする必要があります。
直接会うのが難しい場合は、メッセンジャーやオンラインチャット、ビデオ通話などでテストしてもよいでしょう。ただし、オンラインで試して十分に可能性が検証できるようなプロトタイプを用意する必要があります。安く、早く、求められるか判断するのが目的なので、どんな形でも良いのです。
こうしてプロトタイプを作り、ある程度テストユーザーが「ほしい」「印象に残る」「かなり便利」「使いたい」といった反応と感動をもらえるようであれば、Twitterや他のSNSに出しても、好印象で受け入れられる可能性が高くなります。もちろん、公開の仕方も重要ですが。具体的な公開の仕方については、次項でご説明させていただきます。